斉藤桂(23歳/油絵画家)Part.2|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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2. 職業画家になる決断

『矛盾の上に咲く花』斉藤桂『矛盾の上に咲く花』 (09〜10年/130cm×162cm)

ーー美大の授業って普段はどんなことやってるんですか?

「学年によって変わってくるとは思うんですけど、1年の頃は課題が与えられるんですよ。掲示板に箇条書きで張り出されていて色んな課題が出されるんですけど。それで3年になるとほとんど自由で、入りたい教授のクラスに入って色々描いてって感じですね。現代美術とか立体とか色んな教授がいるんで、その中から選ぶんです。それで最後に卒業制作で集大成って感じでした」

ーー油絵学科は何人いたんですか?

「140人くらいだったと思います」

ーーじゃあ2年までは課題ごとにその140人で絵を描くの?

「いや、課題ごとに別れるんで、20人くらいずつかなぁ。だから課題は6クラスぐらいに別れて描くんです」

ーー大学を途中で辞めようと思ったことはなかった?

「それは、あったのかなかったのか……。大学のことはもうあんまり覚えてないんです(笑)。あったのかもしれないけど……」

ーーほとんど覚えてない程度なんだ?

「そうですね。うん。なかったのかな」

ーー油絵は向いてないんじゃないかって思ったことは?

「それは予備校の頃に結構思ってましたね。先生に「お前才能ないかもな」って言われたことあって(笑)。でも辞めようとは思わなかったですね。飽きなかったんですよ全然」

ーー描くのが楽しかった?

「楽しかったですね」

ーー今は卒業してひとりの画家として生きてるわけですけど、ムサビの油絵科を出た人の中には普通に就職する人もいるんですか? 

「ほとんどいないですけど、たまにいますよ」

ーーやっぱりひとりで絵を描き続けている人が多いんだ?

「そうですね。バイトとかしながら作品を作ってる人が圧倒的に多いです。就職するのは1割くらいですかね」

ーー斉藤くんはどこかの企業に就職しようとか考えなかったの?

「それは3年の暮れくらいに考えたんですよね。普通の大学生が就活を始める時期で。このまま絵をやってても食って行けるか分かんないしって。でも就職もどうかなって思っていて、一時期は美大出たあとに映画関係の専門学校に入ろうかなって思ってた時期もあって。でもそうするとまたお金かかっちゃうし。「大学は4年で絶対に出てくれ」って親には言われてたからそれはちゃんと守ろうと思っていたし、そのあと専門に入るとしても自分で稼ぎながらっていうのはちょっと厳しいかな……って思ったりして。それでいろいろ考えていた時に、なんとなく公募展に出してみたんですよ。それまでは公募展って一回くらいしか出したことなかったんですけど、もうすぐ4年だしなって感じで。それが賞を穫れて色んな画廊から声をかけられるようになったんですよね。それでちょっと先が見えたっていうか。収入の面でちょっとだけ不安がとれたっていうのがあって、就職しないでやって行こうってその時に決めましたね」

『世の中に不感症』斉藤桂『世の中に不感症』
(07年/145cm×112cm)
トーキョーワンダーウォール受賞
ーーそれがトーキョーワンダーウォールだよね?

「そうですね。それまでは就職も考えてました。仕事しながらだって絵は描けますから」

ーー油絵描いている人って意外といっぱいいるもんね。

「ほんとに多いですよね。アマチュアも含めて、日展なんか観に行ったら本当にたくさんいるんだなって思うし、逆にいうとこのジャンルはなくならないだろうなっていう安心感もあります」

ーー今はもう絵だけで食って行くっていう決心がついているんだ?

「そうですね。絵だけっていうこだわりはないですけど、何か作って食って行けたら幸せだなとは思います」

ーーあ、そうなんだ。絵に限らず何かやりたいっていう思いがあるの?

「実際に出来るかどうかというのは置いといてですけど、映像とか写真とか文章とか絵本とか、色々やってみたいなっていうのはありますね」

ーーどうしても油絵っていうこだわりではないんだね。

「学生の頃はあったんですけどね。でも最近は描いているうちに「これは絵じゃなくていいのかも」っていうのを思うようになって。やりたいことによってメディアを選ぶべきなんじゃないかな、って思い始めたんです。だから絵を描いていて苦痛に感じることが多くて。これは絵で描いている限りいい作品にはならないんじゃないかなって。だからもっと自由にメディアを選べるようになればいいなって思います」

ーー例えば、描きたい物があってそれを絵にしてみたんだけど、何か違うなっていう違和感?

「そうなんです。違和感がすごくあるんですよね。最近特に。イライラするんですけど」

ーーこれはきっと映像にしたほうがうまく行くんだろうな、とかそいういう感じですよね?

「そうですね。実際に映像にしても良い作品になるのかどうかっていうのは分からないんですけど」

ーー今は自宅で描いてるんだっけ?

「絵を描く時は自宅のリビングを閉め切って。うちの実家はリビングに入らなくてもそれぞれの部屋に行けるような構造で、食卓も別にあるんで」

ーー今卒業して約1年が経ちますけど、その間の制作のペースってどんな感じなの?

「僕はもともと制作のペースはかなり遅い方で(笑)、本当に枚数が少ないんですよ」

ーー1枚書くのでどれくらい時間かかるの?

「僕の場合だと、大きさによって製作期間が変わるとかしないんですよね。2メートルくらいのものもすごく小さい作品も同じくらいの時間で完成しますね。だいたい1ヶ月から2ヶ月くらいですかね。長くて2ヶ月半くらいです」

『人生ゲーム』斉藤桂『人生ゲーム』
(08年/130cm×130cm)
ーー描いているときの生活のスケジュールはどんな感じですか? 結構規則正しくやってるの?

「いや、メッチャクチャですね(笑)。去年卒業制作を描いてた時期だと、4時間描いて 30分寝てっていうのをずっと繰り返して、次の日は一睡もしなくてまた次の日にずっと寝てるとか。本当に無茶苦茶になっちゃいますね。規則正しくできたらいいなとは思うんですけど」

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斉藤桂
(23歳/油絵画家)

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さいとうけい 1986年東京都生まれ
高校卒業後に現役で武蔵野美術大学造型学部油画学科に入学。グループ展を経験した後に在学中の08年にトーキョーワンダーウォール賞を受賞。トーキョーワンダーウォール入選作品展(東京都現代美術館)に参加し、東京都庁での入賞者展にて個展を開催。09年11月には東京コンテンポラリーアートフェア2009(東京美術倶楽部)にて個展「よしんばてふてふが飛んだとして」開催。今後の美術界を支える注目の若手作家。

twitter:@keichikurin

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