野口尚子(26歳/印刷コーディネーター)part.1|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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1.出版のデザインが窮屈に思えて

野口尚子(26歳/印刷ディレクター)

ー大学は武蔵野美術大学の基礎デザイン学科ですよね。基礎デザインってどんなことやるんですか?

野口 私たちの時はいろんな科目を持ち回りでやっていたので、絵画とか彫刻の授業もあったし、平面構成や色彩構成もやりました。3年になるとチームで制作するプロジェクト的なものが多かったですね。問題設定から始めて、それを解決するプランを提案するとか。プレゼンテーションが多い学科でした。

ーやりたいことを自分で決める感じですか?

野口 よく言えばそうですけど、悪く言えばやりたいことが見つからないと何もできない学科でもありますね。4年になってからは文字の研究を主にやってました。

ー文字の研究というと?

野口 日本語の作りってすごく独特だなという気がしてたんです。例えばひらがなって、漢字を書き崩して作られてますよね。でもただ漢字を省略してできた形というよりは、意味や内容と対応した形になっているんじゃないかと思って。例えば縦書きで「さらさら」って書くと、本当にさらさら書けますよね。

ーあぁ……確かにそうですね。

野口 それに気が付いてから、ひらがなは音だけじゃなくその動きも表しているんじゃないかと思って、他にも似たものがないか探したんです。擬態語を書く時の指先の位置と動きをトレースすると、どういう形になるかを研究しました。

ー面白そうですね!

野口 例えば、「さらさら」は腕をほどんど直線に下ろすだけで書けてしまうし、「ふわふわ」を書くときはアーチ状の運動をするっていう。

ーおぉ! ふわふわっぽい!

野口 「ぽたぽた」は腕が上下するようにできてるとか。

ーぽたぽたしてますね! その研究は今はやってないんですか?

野口 もうやってないんですよ。もう4年か5年前の研究ですけど、未だに考え方のパターンとして使えるなとは思いますね。

ー大学を卒業したあとにどういう方向に行こうかっていうのは、なんとなくでも考えてましたか?

野口 入学した段階では全然考えてなかったです。紙媒体に関わる仕事をしてみたいと思っていたので、エディトリアルとか出版関係の会社に入りたいとは思ってたんですけど。それで実際、大学出てからは出版の制作会社に就職しましたし。

ー出版の制作会社っていうと、編集プロダクション?

野口 編プロではなくて、デザインとDTPをやっているところでした。ほとんど製版の入口までやっている会社だったので、社内にフィルムセッターっていう、版を焼き付けるフィルムを出力する機械があったくらいで。

ーそこまでやってる会社って結構あるんですか?

野口 多くはないと思います。デザインから管理をして、オペレーターが流し込みもやって、校正確認を完璧にしたデータで納品するっていう。だからいろいろな勉強ができる会社でした。特に私はデザイン部署ではなくて、外注管理とか社内の設備管理とか、やる人が決まってない仕事をまとめてやる部署だったので(笑)。

ーその会社に入った理由ってあるんですか?

野口 うーん、面接官が面白かったんです。一次面接から40分とか1時間ぐらい、ずっと一対一で話すんです。それを3回か4回ぐらい繰り返して、採用を決める会社で。本当に一緒に仕事ができる人なのかどうかをじっくり話して決めるっていうやり方が面白くて、せっかく採用して頂いたし入ってみようと。

ーでも会社は2年くらいで辞めちゃうんですよね。

野口 そうですね、丸2年はいなかったくらいです。私はものをつくる仕事ができればいいなって思ってたんですけど、雑多なことを請け負いつつ、自分で仕事をつくりながらやるっていうことが多くて、しかもほぼ上司とふたりだけの部署で。それはそれで、すごく勉強になったことは間違いないんですけど。

ー自分がやりたいこととちょっと違った?

野口 なんていうのかなぁ。私は会社の中の人よりも、外部の人とやりとりすることも結構あったんですね。デザインや進行管理をする仕事へ移ることもできたんですが、ふと社内を見てみると、ちょっと出版のデザインが窮屈に思えてしまって。

ー窮屈?

野口 営業が編集部とやりとりして、デザイナーが組んで、それにオペレーターが原稿流し込んで、って役割分担があるんですよね。それを悪いとは全然思わないけど、私はクライアントとも直接話をしてイメージを摺り合わせたいし、全体の流れを見ながらものづくりがしたいなって思い始めちゃったんです。

ーなるほど、それは大きい会社にいたら難しいってことですよね。

野口 効率をあげて上手く回していかなきゃいけないですからね。だから、ここにいたらちょっと難しいのかなって気持ちが出てきちゃって。

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野口尚子
(26歳/印刷コーディネーター)

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のぐちなおこ 
1984年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、出版系の制作会社に就職。その後フリーランスとなり、印刷専門のディレクションを行う『印刷の余白Lab.』を立ち上げる。紙と印刷に関わるワークショップ『紙ラボ!』も主催。『AR三兄弟の企画書』(日経BP)では装丁デザインを担当するなど、活動は多岐にわたる。
twitter:@kami_labo

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