まつきあゆむ(26歳/ミュージシャン)|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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5.不安な部分も伝えて全部むき出しにするしかない

まつきあゆむ/アンケート1 まつきあゆ/アンケート2

ーー僕がまつきさんを知ったのは『1億年レコード』の件からなので本当に最近なんですが、今までツイッターでの著作権の議論ですとかミュージックサルベージを途中で辞めて(※4)っていうのを聴いたりしていて、すごく真面目というか誠実というか、正直でいることを心がけている人なのかなって感じてたんです。さっきも話した「もうライブをしません」って日記で宣言した時も、伝えようとする姿勢がすごく真摯でしたよね。そういう姿勢のルーツは庵野さんから来てるのかな、って今思いました。

「あぁー。最低限のルールってやっぱりそれぞれにあるじゃないですか。だからそれ以下はもうないって思っている以上のことはやっていかないと。結果失敗しても全然いいし、そこで諦めた時点で全て終わるというか、観ている人にも絶対そこは分かるじゃないですか。こいつ妥協したなとか、ごまかしたなとか。そういうものにはお金払いたくないし観たくないし。それは『1億年レコード』の出し方にしたって、弱い所も不安な部分も伝えて全部むき出しにするしかないんですよ。そうやって割り切れたから『自宅録音』を出した時にあった変なプライドみたいなものが全部なくなったのかもしれませんし」

ーーそうですか。何と言うか、まつきさんが話す庵野さんへの思いっていうのが、僕が今まつきさんに抱いているイメージとすごく近いなって思ったんですよね。

「いや……それは嬉しいです(笑)。まぁ庵野さんも同じですし、本音を言えばジョン・レノンも会社で働いている人もみんな一緒で、やり方の違いはあるけどみんな死にものぐるいでやってるんですよね。庵野さんも『破』とか『序』って自分の会社を立ち上げて作ったインディー映画じゃないですか。それって全部映画で稼いだお金を投資してまた新しい映画を作るっていうことで、しかも作ったものはめちゃくちゃ良くて、それはすごい格好良いことじゃないですか。だとしたら僕がJASRACに権利を委託しないで自分で売ることなんて、当然の覚悟だって思えるんですよ」

ーーちょっと話が逸れますが、本棚に『監督不行届』(祥伝社)がありますよね。今のところ僕の中では、エヴァがすごく好きな人はみんな持っているっていう法則がありますね。

「(笑)。面白いですよね。でもあれは肝心の部分がちょっとね、知りたい部分は分からなかったっていうか。やっぱ一番気になるのって好きな人の頭の中じゃないですか、でもそこはごまかされてたのが悔しいですね」

ーーちなみにやってみたい職業って何かありますか?

「まぁだいたいやらせてもらってますよ。結構やってみたいと思ったらやっちゃうんですよね。例えば小説を書いてみたいと思ってて、実際に書いてますから。別にどこに載るわけでもないし、まだ3ページか4ページくらいしか進んでないですけど、去年からずっと書いてて。いつか完成して納得行くものだったらなんらかの形で発表しようとは思ってます。それ発表したら僕はもう小説家じゃないですか。だからやっぱりなろうと思った瞬間になれるんですよね」

ーーへー。どんな話なんですか。

「まぁ真面目に言うとサンプリングみたいにして作ろうかなと思っていて。書きたいシーンをどんどん書いていって、それをあとで再構築して行った時にひとつのラインが見えたら繋げてっていう。でもそんな、人様に読んでもらうような文章じゃないですよ」

ーーじゃぁ楽しみにしてます。読みたいですねいつか。 

※1 まつきさんが好きな曲を流す不定期インターネットラジオ「ミュージックサルベージ」で、音楽評論家でありミュージシャンでもある高橋健太郎氏が「まつきあゆむ君は、アーティストに著作権料を支払わずに、ネット・ラジオで音楽放送をするのはやめるべきだと思う」とツイッターで発言したことを発端として巻き起こった著作権議論。生放送だったこともあり、まつきさんは直ちに曲を流すのを辞めて自分の考えをラジオ上で話した末に「ミュージックサルベージ」の終了を宣言、その後に七尾旅人氏、アジカンの後藤氏、曽我部恵一氏らも参加してこれからの時代における音楽と著作権の在り方についての考えが述べられた。


ーーでは書いてもらったアンケートについてお聞きしたいんですが……

「あ、今読まれるんですね。なんだ大喜利みたいなこと書かなきゃ良かった……恥ずかしいじゃないすか(笑)」

ーーそんな大喜利みたいなこと書いたんですか(笑)。ではまず、”尊敬するクリエイター”の鶴巻さんていう方は?

「それはアニメーターというか作画監督というか。エヴァとかで主にやってるGAINAXの人ですね。鶴巻さんが監督した作品が『フリクリ』(00年)とか『トップをねらえ2』(04年)とかですね」

ーー”自分の武器は?”の質問の答えが自宅録音と瞬発力ということですが、まつきさんの瞬発力は本当にすごいなって思いますね。

「でもそれが良かったり悪かったりですよ。それ以外は何もないんです。すぐ言わなくていいことまですぐ言っちゃうこともあるし。だからそれは軌道修正したり、周りの人が止めてくれたり」

ーー”不安なこと”は音楽で暮らして行けるかどうか。これはやっぱり不安ですか?

「そこはやっぱり不安だし、不安じゃないと嘘ですよ。そんなに確信があるわけでもないしね。でもそれは音楽家だったら今の時代は特に、みんなそうなんじゃないですかね」

ーー小さい頃はやっぱり勉強出来たんですね。

「小学校で受験しましたしね。でもちゃんと勉強したのその時だけですよ。あとはずっと一貫校だったから特に何もしてなかったし。高校卒業する時の数学なんて20点とかでしたもん」

ーーあ、やっぱり文系なんですね。

「やっぱり英語とか国語は得意でしたよ。国語のテストは全国模試で1位だったこともあるし」

ーーそれめちゃくちゃすごいじゃないですか! じゃぁ例えば作文とかも全然苦じゃなかった人ですか?

「あーもう全然」

ーーですよね。僕も昔から文章書くのが好きな人間だったんで、読書感想文が苦手っていう人が意味分かんなくて。

「ブログに何書いていいか分からないとかよく聞きますもんね。僕もそれは「エェッー!」って思っちゃうんですけど。僕なんかもうどの引き出しから出そうかって迷うくらいで。ただ中身はガラクタですけどね、引き出しはいっぱいありますよ」

ーー初恋は小学校で。ちなみにこれ、告白とかしました?

「いや……、それは流して下さいよ」

ーーあぁ、そう言われると余計聴きたくなりますよね。

「かなりファンシーな質問しますね(笑)。いやでも、さっきも言いましたけど中学高校とずっと男子校に行ってたんで、女っ気がやっぱりなかったんですよ。塾で一緒の女の子とプリクラ撮ってドキドキしたとか、そのくらいなもんで」

ーーちなみに僕も男子校だったんですが、やっぱり男子校っていいですよね。楽しかったですよ。

「えー、そうですか? 俺は結構トラウマっていうか、まぁ楽しかったですけど……でもそれは共学でも楽しかっただろうし。だから漫画で青春を補完しているっていうのはあながち嘘ではなくて。学校から一緒に帰って来るシーンとかってどんな作品観てもあるじゃないですか。でも教室に女の子がいるってことが僕にとってはミラクルなんですよ。それを一生経験出来ないまま死んで行くのか、っていう話をこの前男子校だった友達としていて」

ーー僕は中学までは女子がいたんであまり感じないですね、そいういうの。やっぱり全然違うんですね。

「だって俺、中学の時に唯一話していた異性って母親だけですよ(笑)!! 何かブルーになってきた……」

ーーすいません変な質問してしまって(笑)

「いや、やっぱりこれは人間形成として大きいと思いますよ。こういうコンプレックスがあるから僕は音楽にぶつけられるのかもしれないですけど……。でも自分の子供が生まれたら絶対に共学に行かせたいです。もう積極的に授業参観も運動会も観に行きますよ。「あー女子がいる教室だ」って(笑)。もうこれ以上話すと泣いちゃうんで……」


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まつきあゆむ
(26歳/ミュージシャン)

まつきあゆむ(26歳/ミュージシャン)

1983年生まれ。14歳で自宅録音を始め21歳でCDデビュー、その後4枚のアルバムをリリース。07年にはmyspaceで毎週永続的に新曲を発表すると宣言した「新曲の嵐」をスタート。
2010年1月1日にダウンロード限定でまつきあゆむが直接販売する『1億年レコード』を発売し、リスナーから活動資金のための寄付金を集めるMAF(マツキアユムファンド)を開始したことで話題を呼ぶ。今年4月には全国を旅行しつつ、旅先でのライブをUSTREAM中継するスタイルのツアー「旅行」を敢行。
USTREAMにてインターネットラジオ「ほうかご実験クラブ」を毎週土曜日放送中。

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