まつきあゆむ(26歳/ミュージシャン)Part.2|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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2. 「一生続ける」と宣言したことの意義


まつきあゆむ/1億レコード『1億年レコード』特設サイトよりーーその後2005年にくるりのラジオで紹介されたのがきっかけでいろいろ動き出したんだと思うんですが、それはオリジナル音源を送ってたんですよね?

「そうですね、毎週曲を書いて送ってればそのうち流れるだろうと思って。そうしたら毎週送ってくるバカがいるって話題になったらしくて曲かけてくれたんです。本当にその当時はJWAVEに直接持って行ってディレクターさん呼び出して、入り口の自動改札みたいなところから渡してましたね。「これ超良い曲だから絶対くるりに聴かせて下さい」って。もう怖いもの知らず(笑)」

ーーそれも自宅で録った音だったんですか?

「そうですね。今とほとんど変わんない曲ですよ」

ーーそれでくるりのレーベルのコンピに参加したのが最初のCD(「NOISE McCARTNEY RECORDS COMILATION-2」/05年)になるんですが、ラジオで流れたりCDになったりした時はどんな気持ちでした?

「それはもうねぇ。しかもわりとメンバーの反応も良かったんですよ。それがすごい嬉しくて。今でも音楽やっていた中で三本の指に入るくらいの出来事でしたね。未だにMP3でコピーして色んなハードディスクに保存してますからね。どれがクラッシュしても大丈夫なように(笑)」

ーーそれでレーベルと契約みたいなことになるんですか?

「そこはちょっと説明が難しいんですけど、何年契約とかではなくて、ある曲に対して著作権を預けて何%かを貰うっていう単発契約というか。その頃はもう本当に契約の話なんか全然気にしてなかったし、なんでもいいからCD出してくれって言う気持ちでしたよね。最近になってようやく著作権とか自分の曲の権利に敏感になって来た時にタンスの奥から当時の契約書を引っ張り出して見てみたら、あぁこんな契約だったのか、って」

ーーそういう業界の部分は僕は非常に無知で申し訳ないんですが、それは何%の契約なんですか? 

「それは2%くらいでしたかね。1.5%だったかな。僕もおぼろげなんですけど。確か1%台はちょっとないんじゃないのって言ったんですけど、でも2%には出来ないって言われて。やっぱ2500円のアルバムが売れて戻ってくるのは50円か、って思ったんですけど、まぁそういうもんだと思うしかない時期っていうか。僕も世間知らずだったんで」

ーー当時まだ21歳ですもんね。大学生だったんですよね?

「そうですね。大学行きながらやってました」

ーー就職活動は一切しなかったんですか?

「一切しなかったです。だから周りがスーツ着て髪を黒く染めたりしている時に、「でも俺はラジオで曲かかってるし」みたいなしょーもないプライドっていうか、そこで戦ってたっていうか。でも今になれば僕はそれで良かったなって思ってますけどね」

ーーもうCDも出せたしこれで食って行けるだろうって思ったんですか?

「いやそれは全然。アルバイトもしてましたし、……バイトしてましたしっていうか、今も平行してその問題はありますしね、でもまぁ本当にフワフワしたままここまで来たっていうのが本当のところで。だから「俺は絶対に成功すると思ってたからやり続けた」みたいな見出しにはしないで欲しいです(笑)。言ってることはそんなに間違いではないのかもしれないし、自分が作ってる音楽に対してはずっと自信があったけど、それがなかなか身を結ばなかったな、っていうことは思ってて。ただそこまで不安にも思ってなかったというか。一番ヤバイなって思うのは、全然曲が出来なかったりとか、いい曲だと自分で思えないのに発表してたりとか。そういう時は焦りましたけど」

ーー当時の周りの友達は何て言ってました? 就活もしないで曲ばっか作ってる、っていうまつきさんに対して。

「どうなんでしょうね。でも応援してくれてるというか、理解してくれる人は多かったですよ。まぁ同世代だし、そういうことやってる友達がいたら自分も応援するだろうし」

ーーご両親は?

「両親はもう全然。何やってんだよって言ってましたし、今でも思ってますよきっと。中学高校大学って一貫の学校に入れてやったのに、いくらかかったと思ってんだよって」

ーー昔から曲を作っていたのは知ってたんですよね?

「それはもちろん知ってました」

ーー曲は聴いたことあるんですか?

「それはどうだろう。でも(05年/デビューミニアルバム)は、最近実家に帰ったら置いてありました(笑)。「アンタこれ売れなかったやつだよね?」って言われて「そういうこと言うんじゃねーよ」って話して(笑)。今回の『1億年レコード』の話も全然してなくて。まぁ説明のしようがないし、まず今の音楽業界がどうって話も把握してないだろうし、自分で売るとか何やってんの? って言われるだろうし」

ーーちなみに学生時代はスポーツとかやってました?

「いや、全然。1回もクラブとかサークルに入ったことがなくて。だからそういう失われた青春時代を取り戻すために 『らき☆すた』 (角川書店)とか 『けいおん! 』 (芳文社)とか 『あずまんが大王』 (メディアワークス)とかを読んでるんです(笑)」

ーー『らき☆すた』で(笑)。

「そうそう。僕男子校だったし」

ーー取り戻せてます?

「だいぶ取り戻しました(笑)。実際に体験するよりかなりいい思い出来たかも」

ーー07年に新曲の嵐を始めて、これが今も続いていて、まつきさんの活動の大きい部分のひとつになりますよね。

「そうですね、新曲の嵐を始めたのは大きいですね。やっぱりCD出してライブしても全然返って来ないっていうのがあって。それはいろんな意味で、お金としても返って来ないし、反響とか反応としても返って来なかったし。届いている人には届いてたのかもしれないけどやっぱり少なくてっていうジレンマがあって、そういうのを自分の中で打破するためというか。これがその後『1億年レコード』とかMAFとかの流れに繋がって行くと思うんですけど」

ーー毎週新曲を作るってなかなか聞かないし「大変じゃないの?」ってよく言われると思うんですが、毎週続けて行くという部分ではどう思ってました?

「でも最初にラジオに送っていた時は毎週作ってたんですよ。日曜日の朝まで曲作ってバイク便を出すか直接持って行くかして、月曜日の深夜にラジオで流れるかどうかっていう勝負だったんですよね。だからそれに比べると全然楽というか」

ーー苦ではないんですね。

「まして漫画描いている人とかは週刊で連載持ってたりして、旅行にも行かずに家でずっと描いている訳ですからね。それでクオリティ高い人は高いじゃないですか」

ーーでも漫画家の場合は毎週描くことが、ページいくらとしてそのまま原稿料になって収入に直結するわけですよね。でもまつきさんの場合だと、この曲を作ったからどうなるっていう分かりやすいものがあるわけではないじゃないですか。そういう部分でのモチベーションというか、毎週作ることに疑問はなかったですか?

「んー、ただ意味はないとは全然思ってなくて、まず自分のためにやっていることなんですよね。日々新しいことを考えて形にして残しておいて、あとで反芻してまた新しいものを出すっていう繰り返しをするメリットはすごく大きいことで。あとはここでしか聴けない曲があるわけで、それがすごく好きな音楽だったら僕ならその人の昔の曲買うから、とも思ってて。当時はそれがなかなか結びつかなかったんですけど、今は完全に結びついている実感もあって。新曲の嵐を聴いて「まつきあゆむっていいな」って思ってくれた人が100人いたら、その中の何人かはやっぱり『1億年レコード』を買ってくれているんですよね。ようやく実って来たなというか」

ーー始めたときから「一生続ける」っていう宣言をしたわけですけど、それは例えば1年間とか2年間はまず続けます、って言うことも出来たと思うんですよね。あの段階であえて一生って言ったことはどうだったんですかね。

「でも1年間続けるっていう文章と一生続けるっていう文章だったら、どっちが本当か、どっちを信じたいかって言ったら、やっぱりね」

ーーあぁ、なるほど。

「1年続けるのなんて頑張れば出来ることじゃないですか。トーンダウンするのが俺は何事も嫌で。だから、デカいこと言おうっていうのともちょっと違うんですけど、結果的に嘘になってたとしても、自分がこっちだと信じているほうを書く、というか。それは文章でも歌詞でもそうなんですけど。結果として破綻したんだったらそれも見せないと。「破綻しました、ゴメンなさい」でいいと思うんですよね、人間なんだから。そういうのを僕は庵野さんっていう『エヴァンゲリオン』の監督から学んだ部分で。
 あの人って昔劇場版を公開する時に、ギリギリまで作ったけど完成しなかったから過去の総集編にして公開したじゃないですか。あれって「ふざけんなよ!」ってみんなが思ったはずなんですよね。「こんな終わり方で満足できるかよ!」って僕も思ったし。でもそうやって周りに言わせておいて、時間かけて作った完成形を公開したら誰もが黙った、っていう。
 その説得力って人間の力の根源的なものだと思うんですよ。それはビートルズなんかも全部そうで、ダメなところは全然ダメだし、でもすごいところは誰も口を挟めないくらいすごいし。そのすごい部分があるんだったら嘘になる部分があったっていいじゃん、とは思います」

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まつきあゆむ
(26歳/ミュージシャン)

まつきあゆむ(26歳/ミュージシャン)

1983年生まれ。14歳で自宅録音を始め21歳でCDデビュー、その後4枚のアルバムをリリース。07年にはmyspaceで毎週永続的に新曲を発表すると宣言した「新曲の嵐」をスタート。
2010年1月1日にダウンロード限定でまつきあゆむが直接販売する『1億年レコード』を発売し、リスナーから活動資金のための寄付金を集めるMAF(マツキアユムファンド)を開始したことで話題を呼ぶ。今年4月には全国を旅行しつつ、旅先でのライブをUSTREAM中継するスタイルのツアー「旅行」を敢行。
USTREAMにてインターネットラジオ「ほうかご実験クラブ」を毎週土曜日放送中。

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