熊谷彰博(25歳/デザイナー)part.4|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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4.新しい視点や価値観を作りたい


ーー今まで受けた仕事でいちばん思い入れがあるものはなにか選べますか?

「それぞれ思い入れはありますが……、ひとつ挙げるならオリンパスのカメラバックですね。打ち合わせやサンプル制作の濃密な時間もありますし、初めて商品化されたのものでもあるので思い入れが強いです」

ーー発売は3月でしたけど、向こうから話が来たのはいつだったんですか?

「前年の2月でした。発売まで約1年のプロジェクトでしたね」

ーークライアントから仕事の話が来てなにかを作ったり提案したりするのが通常の流れだと思うんですが、その自分の作ったものに対して不安とか疑問とかがあった場合に、自分の中でどういう判断基準を持ってますか? 例えば自分の中で納得できるものであれば大丈夫だと思うとか、いろんな人に意見を聞いてみて判断するとか。

「その段階ではあまり悩みませんね。確かに不安なんですが、提案してみないとなにも始まりませんから。それと、自分が実際にお金を出して買おうと思えるものであれば大丈夫だとは思っています。デザイナーとしてではなくて利用者として考えるよう心がけています」

ーー今後作りたい物とかやってみたいことはありますか?

「色々な物は手掛けさせて頂きたいですが……。物を作ることと共に商品の企画段階から「何故作るのか?」「誰に届けるのか?」をコンセプター・ディレクターとして関わり、新しい視点や価値観やサービスを作れたらと思います。個人的にはテクノロジーと密接になったものを作ってみたいとは思っているのですが、そうすると本当に次の時代のものになってしまうので、そのテクノロジーを実用性まで持ってくるのに時間がかかってしまいます。テクノロジーとなにかが結びつくことによって少し未来のものが作れるのであれば、それはやってみたいですね」

ーーテクノロジーとかシステムそのものってことですよね。例えばiPhone?

「そうですね、すごく簡単に言うとそういう考えです」

ーーではあと5年で30代ですけど、どんな30とか40になっていたいって考えますか?  

「遊び心を持ちながら、ディレクター・デザイナーとして世代・職種を超えたチームを形成できればと思っています。例えば病院やホテルなど大きなスケールのプロジェクトで外部の方々とチームを形成して、多角的な角度からサービス/コミュニケーション/グラフィック/プロダクト/ウェブ/建築・インテリア/音楽など、全てを見直して作ることができれば21世紀的な新しいものが生み出せるのではと考えています」

ーー今後長い目で自分の仕事を考えた時に、とりあえず会社にして自分ひとりの企業としてやっていくとか、ちゃんとした会社組織にして部下を雇ってとか、選択肢はいろいろあると思うんですがなにか考えはありますか?

「会社にしたとしても数人でしょうし、今は外部の方々とチームをどう作れるのかを主に考えていますね。デザイン会社としてクオリティを高めていくのも良いですが、尊敬できる方々と一緒に仕事をさせて頂くことで、より高いクオリティの仕事をすることが出来ればと思っています」

ーー今現在仕事は楽しいですか?

「それは本当に有り難いことに。すごく楽しいですね」

ーーしんどいこととかはないですか?

「辛いことがあっても他に良いことを見つけて、そこにポジティブになれるので。楽観的な性格だからフリーでやれているというのもありますよね」

ーーフリーランスの人は自己プロデュースというか、自分の見せ方とか売り込み方って言うのはすごい考えると思うんですが、熊谷さんを見ているとその意識は特に強いのかなって感じていたんですよね。やっぱりすごく考えてますか?

「そうですね、見せ方・売り込み方を考えることはとても大事なことだと思っています。例えば「飲食店の店構えが良い」だと「ここでは美味しい食事ができるだろう」と思えますよね。その後美味しい料理を提供できるかは本人の実力次第ですが、店構え・サービスも良くて料理も満足できる飲食店なら自分も通いたいと思えるので、そういう仕事をしたいと思っています」

ーーインタビューの冒頭で人見知りって言ってましたけど、全然そういう感じがしないんですよね。だから結構頑張ってるのかなって思うんですけど……

「人って結構変わると思いますよ。人見知りは変わらなくとも社交性は備わってきます。例えば突然自分が役者として食べていくことになって、いきなり舞台に上げられたら身振り手振りで演技するしかないじゃないですか。もし突然舞台に上げらたら演技しますよね?」

ーーあぁ、そういう感覚なんだ。

「そういう状況になれば人見知りなんて言ってられなくなりますし、それを繰り返していることで自然と慣れてきて、初対面の方でも自然に伝えたいことが話せるようなってきましたね。いきなり知らない人と2人きりになってスムーズに話せるのかと言われると難しいと思うので、まだ人見知りな部分もあるんでしょうが」

ーー仕事を始めた頃は社交的ではなかった?

「自分では社交的ではなかったと思いますね。意識的に改善して今があるのだと思います」

ーーでは最後に30までの目標を。

「あと5年でのビジョンを明確な言葉にするのは難しいですね……。なので「海外の仕事をする」にしておきます。でも自信がないので小さめで(笑)」

ーー(笑)。でも結構サクっと海外とかでもやってそうですけどね。

「英語が不得意なのが問題ですよね。英語がスムーズならすぐにでも海外に行ってみたいとは思うんですけど」

熊谷彰博03

おわりに


 この3年間を単身フリーで身を削って来た熊谷氏の話からは、この時代に自分の実力ひとつで生き抜いて行くための決意や強さをしっかりと感じることができた。これは普通のサラリーマンからは絶対に感じられないもので、それだけでもかなり刺激的なものだった。さらに熊谷氏がフリーランスでいることに見出している意味やデザイナーとしての立ち振る舞いにも興味深いものがあった。
 このインタビューでデザインやデザイナーという存在に僕自身が抱いていた疑問——デザイン/デザイナーとは何か?——の全てがはっきりしたとは正直思っていないが、少なくとも熊谷氏個人が考えるデザイン/デザイナー像の一端を伺い知ることができたことで、デザインという概念の破片程度は掴めたような気がしている。

 そしてこの原稿からは熊谷氏の人柄は読み取りずらいかもしれないが、実際の熊谷氏は聡明ながらも気さくで本当にカッコイイ人であり、彼の作る鍋は抜群に旨いということも付け加えておきます。

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熊谷彰博
(25歳/デザイナー)

熊谷彰博プロフィール

くまがやあきひろ 1984年東京都生まれ
デザインディレクターとしてプロダクトデザイン/空間デザイン/ブランディングなどのコンセプトメイキング・デザインを手掛ける。主な仕事にオリンパスのカメラバッグ「CBG-2」を手掛けグッドデザイン賞を受賞。他、DDA賞、SDA賞、エル・デコ : Young Japanese Design Talent 2009など受賞歴多数。昨年はOZONEにて個展「Birthday」を開催し、今後の活躍が期待される注目の若手デザイナー。

AKIHIRO KUMAGAYA
twiiter:@AKUMAGAYA

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