熊谷彰博(25歳/デザイナー)part.3|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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2. “見えないところで循環している” 実感


ーーでも卒業した時って手元にはほとんどなにも無いわけですよね? 卒業してからの仕事はどこから始まったんですか?

「最初は人との繋がりでした。あとはデザインコンペに出したりもしました。以前、 100%DeisgnTokyoとdesignboomというイタリアのウェブサイトが共催したコンペから1等受賞の連絡を受けたのですが、受賞直前に「海外のコンペに同様のアイデアが入賞してたので、受賞を取り消させてください」と言われまして……。アイデアレベルのものは世界中で考えられているので似ていたものがあったのなら仕方ないと諦め、この件がきっかけでコンペは合わないと思い提出しなくなりました。ただ受賞取り消しがとても悔しくて、その悔しさをプラスに変換しようと思いFLASHの勉強をして自分のウェブサイトを作りました」

ーーえ、あれって自分で作ったんですか?

「そうですね」

ーーえーすごい!! あれはどれくらいの期間で出来たの?

「今のサイトはリニューアルをしているので基準にはならないですが、当時は独学で勉強して一週間でサイトアップしました。今までの仕事を発表出来たので、サイトを見て頂いた方から仕事に繋がることも多くなりました」

ーーフリーになった時に3年間て括りを作ったということですが、その3年間で食えるようになると思ってましたか?

「それは3年間で食えるようにならないのでは駄目だと思っていましたし、まずやらないことには何も分からないと思っていました」

ーーいま実際に3年経って仕事も色々入ってくるようになってきたと思うんですが、これはイケるな、軌道に乗ったなって思えた瞬間はありますか?

「今はこんな世の中ですし、そういう部分は未だに慎重に捉えている部分があります。ただ、例えば自分の仕事が世に出たり色々な媒体に掲載して頂いても実感はないんですが、全然知らない人に「この製品見ましたよ」と言われた時には、確かに届いてるという実感が湧きますね。徐々に見えないところで循環しているのかなという意識は出てきます」

ーー事前のアンケートで「同世代の気になるクリエイターは?」という項目に浅野いにおさんを挙げてますけど、それはどういうところが?

「浅野さんの作品はほぼ全部読んでますが、 『素晴らしい世界』 (小学館/03年) 『ソラニン』 (小学館/05年) 『ひかりのまち』 (小学館/05年)など、あの人の描く作品は、当時自分が持っていた感情を掘り返されるような気分になるんですよね。ごく当たり前の日常を描いているようで、そこになにか恐怖が潜んでいるような。あの頃の年齢って、ちょっとしたきっかけや弾みさえあれば簡単に恐怖の感情に振られていたかもしれないし、でも何事も無ければすごく分かりやすい子供でいられたかもしれない。そういう心情の微妙な揺れがうまく描写されているのがすごいと思いますね」

ーーああなるほど。ああいう表裏一体な感覚、なんでもない日常の中に隠れてる脆さみたいな感覚っていうのは多分僕らの世代の独特なものなのかなっていうのは僕も思ってて。

「恐らくそうですよね」

ーーあとウェブ上にある熊谷さんのインタビューで「尊敬する人はマルタン・マルジェラと柳宗理」って言ってるのを見たんですが、それはどういう理由で?

「その取材はオリンパスのカメラバッグがメインの取材だったんですが、オリンパスからの要望が『ユニセックスで男女兼用』と『シンプルでミニマムなもの』だったんです。そこで柳さんのアノニマス(=無個性)という考えに通じるのではと思いまして、柳さんの 『エッセイ』 (平凡社/03年)という本を読んだんです。……というエピソードを取材で話したら「じゃぁ柳さんから影響を受けてるんですね」ということになりまして。確かに影響は受けてますが、柳さんについて特別詳しいわけではありません(笑)」


ーーなるほどね、取材ではそういうことは良くあります(笑)。ではマルタン・マルジェラは?

「マルタン・マルジェラはブランドの世界観を届けるセルフブランディングの部分をとても尊敬していますね。服だけではなくてタグやお店全体のことまで全てをブランディングとして考えていて、そういうビジョンを確立し続けているのはすごいことだと思っています。服を作るよりももっと前の部分から考えがスタートしている人なんだと思いますね

熊谷さんの作品より
熊谷彰博/GEMGEM(09年)
…脚に独自のカットを入れることで堅固にも繊細にも見える佇まいに。カットにより露出する木目も木材ならではの美しさ。
Photo by Takumi Ota
熊谷彰博/「 」(かぎかっこ)「 」(かぎかっこ/07年)
…白い空間に置かれ た赤いペンで、記憶を落書きする空間作品。書か れた文字は赤アクリル板により外からは見えず、 照明の変化により文字がゆっくり消える現象を 記憶の移ろいと共に体感することができる。  SDA賞・DDA賞等受賞 熊谷彰博 × NOSIGNER 共作

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熊谷彰博
(25歳/デザイナー)

熊谷彰博プロフィール

くまがやあきひろ 1984年東京都生まれ
デザインディレクターとしてプロダクトデザイン/空間デザイン/ブランディングなどのコンセプトメイキング・デザインを手掛ける。主な仕事にオリンパスのカメラバッグ「CBG-2」を手掛けグッドデザイン賞を受賞。他、DDA賞、SDA賞、エル・デコ : Young Japanese Design Talent 2009など受賞歴多数。昨年はOZONEにて個展「Birthday」を開催し、今後の活躍が期待される注目の若手デザイナー。

AKIHIRO KUMAGAYA
twiiter:@AKUMAGAYA

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