甲田悠一郎(25歳/ドラマー)Part.4|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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4.メジャーデビューから学んだこと

甲田悠一郎(25歳/ドラマー)甲田悠一郎(25歳/ドラマー)

ーーではアンケートについて少し聞きます。まず好きな言葉の「未完の完」っていうのはどういう意味?

「それは『徒然草』って吉田兼好の本があってその中の一節なんだけど、要するに完成したら終わりになっちゃうから、わざと未完成で終わらせるっていう考え方。日光東照宮って柱が1本だけ逆さにしてあるんだけど、それは完璧に完成させちゃうとあとは滅びて行くだけだから、わざと1本だけ逆さにしておいて未完成のまま終わらせてるっていう考え方なんだって。だから根本的な考え方としては“わざと未完成で終わらせる”って考え方だけど、逆に言えば完成したと思っても“まだ未完成だ”って思えば次に行けるかなって」

ーー今の自分で完成したって思っちゃったらそれで終わり、ってことだよね?

「そうそう。それはスポーツ選手とかもそうだと思うけど、もうやり切った、これ以上やることはないって思ったら次目指せないじゃん」

ーーうんうんなるほどね。カッコいいなぁ。では自分に影響を与えた場所なんだけど、雪山で何かあったの(笑)?

「何かあったというか(笑)、雪山は小さい頃からスキーで良く行ってて。雪が降ると音が吸収されてすごい独特の静けさがあったりして、それで雪山の雰囲気っていうのが好きなんだよね」

ーースキーできるんだ。最近もやる?

「最近はなかなか行けないけどね。でもスキーがやりたいっていうよりも雪山に行きたいって思うんだよね。あの空間に行きたいからスキー行くっていう」

ーー同世代の活躍は意識するってことだけど、最近だと具体的にどんな人たちを意識する?

「音楽以外だと……、興味がないわけじゃないんだけど単純に知らないだけかな。そんなに映画とかもマニアックに見てるわけじゃないから、若いクリエイターの人が作ったから見るってわけじゃないし。単純に知らないだけって感じかな。やっぱり気になるのはミュージシャンだね」

ーー高校とか中学の頃には音楽で食いたいって思ってて、実際にメジャーでやってみて当時イメージしてたメジャーのミュージシャンっていうイメージと現実とのギャップはあった?

「そうだねー、大変だなとは思ったね。色々考えたりやらなきゃいけないことも多いし。純粋に音楽だけやってればいいんじゃないんだなって」

ーーインディーズでやり始めた頃には実際にメジャーっていうものがどういう世界かっていう実態は見えて来ていた?

「いや、インディーズの時はそこまでは考えてなかったかな。実際にメジャーでやってみてからだね」

ーー具体的になにが大変なの?

「やっぱりどういう曲を作るかっていうのもあるし、あとは挨拶回りとかレコード店回ったりもあるし、ラジオとか雑誌のインタビューもあるし。今までは全然やったこともないことばっかりで何て言えばいいかも分からなかったしね。ライブは楽しいけど、でもライブやってる時間なんて結構短いものでさ、結局はほとんど練習の時間だったり作ってる時間だったり、あるいはどうやろうかって考えてる時間だったり、そういう時間のほうが遥かに長いから。まぁそれは何でもそうだと思うけどね、映画とか小説とかにしても、取材とか下準備がものすごく大変で実際に作ってる時間なんてそうでもない、っていうね」

ーーそうかぁ、なるほどね。さっきインディーズで取材を受けた時にも状況はシビアに捉えてたって話が出たけど、メジャーデビューした頃のインタビューでもすごい持ち上げられてるじゃない? 「期待の新星」とか「ブレイク間近」とか。そういうのも割りと冷静に捉えたり戸惑いを感じたりしてた?

「そうだね。こんなこと言ってねーよとか(笑)」

甲田悠一郎(25歳/ドラマー)Dichtenのメンバー3人。左から原孝允(Ba)、渡辺豪(Gt,Vo)、甲田悠一郎(Dr)
(写真は公式サイトより)
ーーやっぱりあるんだ(笑)。それはまぁ良く聞く話ではあるししょうがない部分もあるんだろうけどね。

「そうだね、やっぱりニュアンスが変わると意味が変わっちゃう言葉もあるじゃん。でも原稿的な都合でそういう喋り方になっちゃったのかな、とか。だから分かってはいるししょうがないことだとも思ってるけどね。あとは写真も慣れなかったなぁ」

ーー恥ずかしかった?

「最初は恥ずかしかったね。でもメジャーでやってるとこんなジャケットでこんなデザインでっていう部分も考えないといけないけど、それに関する知識なんて全くないし考えたこともなかったから。だから写真の撮られ方も含めて、今までは音楽しかやって来なかったけどそういうアートワーク的な知識も絶対に必要だなって思ったし、だからこそ今はもっと幅を広げなきゃって思えるようになったよね。音楽だけじゃダメなんだなって」

ーーうーんそうか、やっぱり実際にメジャーでやってみるとそういう考え方になって行くんだね。ちなみに最近は音楽業界がヤバイって頻繁に言われてるけど、それって実際には感じてた?

「んー、でも俺がメジャーでやってた時はそんなには感じなかったかなぁ。着うたみたいなものもまだそこまで普及してなかったと思うし。でも人気のあるないに関わらずCDはもう売れない時代ではあったし、ライブに人が来ないっていうのもあったよね。あとこれは無駄にライブハウスが多いっていうのもあると思ってるんだけど」

ーーあー、確かに多いね。

「だから明らかに需要より供給のほうが多いよねっていうのは思うね。昔に比べると音楽も多様化してるからある程度の需要があるのは分かるんだけど。例えば昔だったら洋楽ならココ、フォークだったからココ、っていう感じだったからそこにみんな集まったけど、今は多様化がすごくてライブハウスの数もものすごいたくさんあるから。アメリカだとすごくマイナーな音楽でも、人口が多いからなんとかなるらしいんだけどね、日本の売れてるバンドよりもアメリカの売れてないバンドのほうがファンが多いっていう話もあるらしいし。
 多様化するのはいいと思うし止められないことなんだけど、日本で多様化が進むってことはそれぞれの世界がすごく小さくて狭いものになっちゃうから、結局はポピュラリティのあるものしかメジャーでは生き残れなくなるっていうのもあると思うんだよね」

ーーそういった状況の中で、メジャーデビューしたからと言ってそれが即成功には繋がっていないっていうことは実際に体感したことだと思うけど……

「まだスタートラインにも立ててないって思うよ」

ーーじゃあまずスタートラインに立つのが目標?

「そうだね。とりあえず音楽できちんとスタートラインに立つことが目標かな」

ーーこれから実際に音楽で食って行こうと思ってる中で甲田君の選択肢は、そういう状況を知っていてもそれでもメジャーデビューなんだ。

「そうだね。そもそも基本的なインティーズっていうのは、もともとメジャーでやってた人が商業的なものが嫌で自分でやり始めるっていうのが根本だから、メジャーで結果を出してればインディーズでもやれるっていう話だったんだよね。でもそれがいつの間にかメジャーの前にインディーズって形、アマチュア=インディーズっていう感じになってるけど、本来はそういうものではないと思うし。それで、やっぱりメジャーで音楽をやってご飯を食べて行きたいなって。
 それにCDが売れなくなってみんながipodで音楽を聞くようになったとしても、いいスピーカーでいい音で聞いてくれるんだったらそれでいいしね。携帯電話で聴くとか、明らかに音が悪いものでもいいっていう空気があるのはすごく嫌だなって思うけど。
 あとは舞台とか映画とかもそうだろうけど、実際に足を運ばないっていう空気があって、でも映画はスクリーンで観る方が絶対に面白いし、舞台だって生で人がやってるのを見るとすごく力があるでしょ。生で体感するってことはすごく大事なことだと思うけど、それが遠のいて行くっていうのはどうなんだろうなって思うよね。それは世界的な流れみたいだけどね、有名なミュージシャンのインタビューでもライブに足を運んでくれる人は少ないって言ってるし」

ーーそうだよね、でもまぁ家にいても楽しいことはいっぱいある世の中になっちゃったからね。

「でも本当に面白いものはそこにはないよ、ってね」

ーーこういうドラマーになりたいっていうものはある?

「やっぱりテクニックとかじゃなくて、人を感動させるというか、格好良いとか観ていて聞いていて気持ちいい、楽しい、そういう風に思われるようになりたいかな。上手いっていうのもそのための要素のひとつではあるけど、ただ上手いだけじゃダメだし、単純に格好良いだけでもダメだろうし。本当に生で聞いてて良いドラムっていうのは、ドラム聞いているだけですごい気持ちいいからね」

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甲田悠一郎
(25歳/ドラマー)

甲田悠一郎(25歳/ドラマー)

こうだゆういちろう……1985年1月生まれ、A型。
5歳の頃に高校で出会った渡辺豪(ギターボーカル)と、渡辺の中学の同級生だった平井遥樹(ベース/現在は the birthday のメンバーとして活動中)と共に 『てるる…』 を結成。すぐに精力的なライブ活動を始める。バンドコンテストでの受賞をきっかけに知名度を上げ、03年にインティーズデビュー。平井が脱退するも高校の同級生だった井嶋啓介(ベース/現在はmyuuRyのメンバーとして活動中)が加入し、06年にメジャーデビュー。セカンドミニアルバムの中の1曲『車輪』が「COUNT DOWN TV」07年1月度のエンディングテーマに抜擢されるなどして話題を呼んだ。
その後バンド名をteruru…に変更、ベーシスト井嶋の脱退と原孝允の加入を経て、現在はDichtenと再びバンド名を変えてメジャー時代にできなかった自由な発想と実験を楽しみ、挑戦し続けている。

■Dichten公式サイト…http://www.dichten.jp

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