木下晋也(29歳/漫画家)Part.3|20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk

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3.ユルい秘訣は執筆ペース?

木下晋也(29歳/漫画家)ーーそう言えば先日「よしもとオンライン」に出演していましたけど、あれも面白かったです。木下さんの映像が出るのはあれが始めてでしたよね?

「そうですね。でも漫画と関係ない時にはちょっとだけテレビ出たことはあるんですよ」

ーーえっ、そうなんですか? それはどうして?

「2、3年前くらいに格差社会をテーマにして下流生活の若い男子が増えてるっていうドキュメントみたいのがあって、それで僕が選ばれまして。ちなみに「下流くん」ってタイトルでした(笑)。でもニュースの中の1コーナーみたいな感じだったから、本当にちょっとだけだったんですけどね」

ーー下流くん(笑)。漫画家を志してる若者みたいな感じで?

「そうです。年収が自分の年齢×10以下の人たちっていう括りで、僕が当てはまっていたので」

ーーそれはどこから話が来たんですか?

「ミクシィでしたね」

ーーへぇー、そんなこともあるんですね。ではまた漫画にお話を戻しますが、『ポテン生活』の1巻2巻が出た時の手応えっていうのはありましたか?

「出てすぐは正直あまりなくて、売れ行き的にも決して良くはなかったですし。でも売れ行きがどんどん下がって行くんじゃなくて、横ばいで地味に売れ続けてたらしいんですよね。それを見て、下がらないってことはそれなりに支持はしてもらってるのかなとは思いました。自信はまだないですけど、このまま行ってくれるとありがたいな、って」

ーー連載をしている時の反響みたいなものはありますか?

「反響というか、すごい大好きですって行ってくれる方とかが身の回りに結構いて。特に編集者の方とかが多くて「モーニングで一番先に読みます」って言ってくれたりとか。そういう人がたまにいてくれたりもするんで、すごく嬉しいことですよね」

ーー今の連載ペースだとウェブが週に2本、モーニングで週1本、あとはモーニング・ツーやまんがくらぶ(竹書房/『並盛りサラリーマン』を連載中)とかの月刊があってだいたい週計算で3本から4本ですよね。2日に1本は書くっていうペースかと思いますが、そのペースとしては大変ですか?

「でも今は週に4本5本くらいを目安に書くようにはしてるんですよ。多分ストックが減ってくると不安になってテンパってしまうので。そのストックをなるべく保ちながら、っていう」

ーーなるほど。じゃあ締め切りがあるからそこに合わせて書くっていうよりは、自分のペースでどんどん書いて行くっていう感じで?

「そうですね」

ーーだからあのユルい感じが出るのかしれないですね。切羽詰まった感じは全然ないですし、締め切りに追われて「描かなきゃ!」ってなってるとなかなか書けない内容ですもんね。

「あ、それはかなりあると思います。多分もっと殺伐としてくるでしょうね(笑)」

ーー『ポテン生活』でも担当編集さんのネーム(下書き)のチェックっていうのはもちろん入ってるんですよね?

「そうですね。だいたい週に1回くらいは打ち合わせしてます」

ーーじゃぁネームの段階で編集さんにボツって言われることもあるんですか?

「それもありますよ」

ーーそれはどういう判断基準なんですかね? 何でもアリみたいな雰囲気もあるし、すごく難しそうですよね。

「そうですね、難しいってよく言われますね(笑)。何回も読んでるとアリじゃないかなって思っちゃうものが多いらしくて、絶対これはナシだなって言いづらいと。でも有り難いことに結構自分と感覚が近い方で、自分で「これはちょっとどうかな」って思っているものを「これはないです」って言ってくれるので助かってます」

ーーちなみに1枚書くので時間はどれくらいかかるんですか?

「3〜4時間くらいですね。でもそれはすごい遅いってことが最近分かって。同じモーニングでやってる『宇宙兄弟』(小山宙哉)が1枚同じくらいで書いてるらしいんですね。スクリーントーンとかはアシスタントの人にやってもらってるらしいんでそれは差し引いてですけど、でもあれを3時間で描けるのってどうなの? ってびっくりしちゃって。いかに自分が遅いのかっていうのを知ってしまいました(笑)」

ーーそれはネタとかが全部出来ている上で描き始めて、3時間ってことですもんね?

「そうです。絶対3時間もかからない感じですもんね正直(笑)」

ーー正直そうですね(笑)。結構サラサラって描いててるのかなって絵柄ですよね。

「あと下書きしないで描いてるって思われることも多いんですけど、かなりちゃんと下書きも描いてるんですよ。逆に下書きないとダメなんですよ僕。あれ以上にメチャクチャな絵になっちゃいます」

ーー『ポテン生活』に関しては木下さんの中でこういう漫画でありたいとか、狙いみたいなものはあるんですか?

「基本的にはルールなしでって感じなんですけど、タイトルに生活が入っているので、あまり突飛すぎるものは避けようかなっていうのは考えてます」

ーーギャグマンガとして8コマでほんのり笑えるものが作りたいっていう感覚ですか? それとも爆笑してほしい?

「……はい、気持ち的には爆笑してほしいです(笑)。でも面白いと思ってくれさえすればいいんですよ。ほんわかしてもらえるってよりは、ちゃんと面白いって思って欲しいっていうのはありますね」

ーー学生時代は落研にいてお笑いが好きだったっていうこともあると思うんですけど、笑いの技術的なことというか、ちゃんと前フリがあってオチに持って行くっていう王道的な展開もありますよね。そういうセオリーや技術的なことも考えますか?

「それも結構ケースバイケースなんですよね。本当に感覚だけで、「これはオチてる」って思って書いちゃうケースもあれば、セオリー通りの時もありますし」

ーーギャグマンガとしてある以上は自分の作品が面白いのかどうかっていう不安はどうしてもあると思うんですけど、やっぱり迷ったりはしますか?

「漫画はお笑いと違ってお客さんのリアクションが直には来ないですし、どうなんだろうっていうのは見えにくいものがあって不安は不安ですよね」

ーーでも迷った時には自分の中で「これなら大丈夫」っていう判断基準がある?

「そうですね……。なんとなくではありますけど、自分の中でのラインというか、そういうもの感覚としてありますね」

ーー作品を書く上で気を付けていることや自分の中でのルールって何かありますか?

「あまり自分の中で意図していない所で読者がひっかからないようにするというか。オチに行く前の段階で、こんな言い方しないでしょとか不自然だよとか、これ後で関係してくるのかなって気になっちゃうところを出来るだけ排除したいなとは思います。スっと読んでいちばん狙ってるところで反応して頂けるように、っていうことは常に考えてますね」

ーー何かを描き込んでいくのではなくて、オチに不必要なものをどんどん削いで行く?

「そういう感覚ですね」


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木下晋也
(29歳/漫画家)

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きのしたしんや……1980年大阪生まれ。
06年に 『ユルくん』 (東京漫画社)でデビュー。8コマ漫画 『ポテン生活』 で 08年の講談社MANGA OPENで大賞を受賞し、モーニング、モーニング・ツー、モーニング公式ウェブサイトにて同作の連載をスタート。現在は他にまんがくらぶ(竹書房)、季刊真夜中(リトルモア)などに連載を持っている。『ポテン生活』は現在コミック1巻〜3巻が絶賛発売中。

【公式ウェブサイト】……『ポテン生活』木下晋也

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